竹内浩三「涙も出ずに」
「涙も出ずに」 竹内浩三 踏切のシグナルが 一月の雨にぬれて 自分が世界で一番不実な男のような気がし Kozo Takeuchi "Namida mo dezuni" 著者:竹内 浩三
浩三さんの詩は情景が豊かなものが多い。これも情景が目に浮かぶ詩です。(1:18)
ぼくは 上りの終列車を見て
柄もりの水が手につめたく
かなしいような気になって
泣きたいような気になって
わびしいような気になって
それでも 溜息も涙も出ず
ちょうど 風船玉がかなしんだみたい
自分が世界で一番いくじなしのような気がし
それに それがすこしも恥しいと思えず
とほうにくれて雨足を見たら
いくぶんセンチメンタルになって
涙でも出るだろう
そしたらすこしはたのしいだろうが
その涙すら出ず
こまりました
こまりました

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