夏目漱石「こころ」第037回(中 一)

「中 両親と私一」
宅(うち)へ帰って案外に思ったのは、父の元気がこの前見た時と大して変っていない事であった。
「ああ帰ったかい。そうか、それでも卒業ができてまあ結構だった。ちょっとお待ち、今顔を洗って来るから」
父は庭へ出て何かしていたところであった。古い麦藁帽(むぎわらぼう)の後ろへ、日除(ひよけ)のために括(くく)り付けた薄汚(うすぎた)ないハンケチをひらひらさせながら、井戸のある裏手の方へ廻(まわ)って行った。
学校を卒業するのを普通の人間として当然のように考えていた私(わたくし)は、それを予期以上に喜んでくれる父の前に恐縮した。…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第37回。上中下の「中 両親と私」の章の第1回である。
(5:24) Soseki Natsume "KOKORO"#37

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| こころ
著者:夏目 漱石 |
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