夏目漱石「こころ」第057回(下三)

「下 先生と遺書 三」
私が両親を亡(な)くしたのは、まだ私の廿歳(はたち)にならない時分でした。いつか妻(さい)があなたに話していたようにも記憶していますが、二人は同じ病気で死んだのです。しかも妻があなたに不審を起させた通り、ほとんど同時といっていいくらいに、前後して死んだのです。実をいうと、父の病気は恐るべき腸(ちょう)窒扶斯(チフス)でした。それが傍(そば)にいて看護をした母に伝染したのです。
私は二人の間にできたたった一人の男の子でした…。
夏目漱石の「こころ」連続読み第57回。上中下の「下 先生と遺書」の章#3(全110回)
(6:12) Soseki Natsume "KOKORO"#57
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こころ 著者:夏目 漱石 |
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