夏目漱石「こころ」第064回(下十)

「下 先生と遺書 十」
金に不自由のない私(わたくし)は、騒々(そうぞう)しい下宿を出て、新しく一戸を構えてみようかという気になったのです。しかしそれには世帯道具を買う面倒もありますし、世話をしてくれる婆(ばあ)さんの必要も起りますし、その婆さんがまた正直でなければ困るし、宅(うち)を留守にしても大丈夫なものでなければ心配だし、といった訳で、ちょくらちょいと実行する事は覚束(おぼつか)なく見えたのです。ある日私はまあ宅(うち)だけでも探してみようかというそぞろ心(ごころ)から、散歩がてらに本郷台(ほんごうだい)を西へ下りて小石川(こいしかわ)の坂を真直(まっすぐ)に伝通院(でんずういん)の方へ上がりました…。
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夏目漱石の「こころ」連続読み第64回。上中下の「下 先生と遺書」の章#10(全110回)
(5:32) Soseki Natsume "KOKORO"#64
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こころ 著者:夏目 漱石 |
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