夏目漱石「こころ」第082回(下二十八)

「下 先生と遺書 二十八」
Kはあまり旅へ出ない男でした。私(わたくし)にも房州(ぼうしゅう)は始めてでした。二人は何にも知らないで、船が一番先へ着いた所から上陸したのです。たしか保田(ほた)とかいいました。今ではどんなに変っているか知りませんが、その頃(ころ)はひどい漁村でした。第一(だいち)どこもかしこも腥(なまぐさ)いのです。それから海へ入ると、波に押し倒されて、すぐ手だの足だのを擦(す)り剥(む)くのです。拳(こぶし)のような大きな石が打ち寄せる波に揉(も)まれて、始終ごろごろしているのです…。
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夏目漱石の「こころ」連続読み第82回。上中下の「下 先生と遺書」の章#28(全110回)
(5:41) Soseki Natsume "KOKORO"#82
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こころ 著者:夏目 漱石 |
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