2007年2月21日 (水)

夏目漱石「こころ」第083回(下二十九)

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「下 先生と遺書 二十九」
私は思い切って自分の心をKに打ち明けようとしました。もっともこれはその時に始まった訳でもなかったのです。旅に出ない前から、私にはそうした腹ができていたのですけれども、打ち明ける機会をつらまえる事も、その機会を作り出す事も、私の手際(てぎわ)では旨(うま)くゆかなかったのです。今から思うと、その頃私の周囲にいた人間はみんな妙でした。女に関して立ち入った話などをするものは一人もありませんでした…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第83回。上中下の「下 先生と遺書」の章#29(全110回)

(5:32) Soseki Natsume "KOKORO"#83


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2007年2月19日 (月)

夏目漱石「こころ」第082回(下二十八)

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「下 先生と遺書 二十八」
Kはあまり旅へ出ない男でした。私(わたくし)にも房州(ぼうしゅう)は始めてでした。二人は何にも知らないで、船が一番先へ着いた所から上陸したのです。たしか保田(ほた)とかいいました。今ではどんなに変っているか知りませんが、その頃(ころ)はひどい漁村でした。第一(だいち)どこもかしこも腥(なまぐさ)いのです。それから海へ入ると、波に押し倒されて、すぐ手だの足だのを擦(す)り剥(む)くのです。拳(こぶし)のような大きな石が打ち寄せる波に揉(も)まれて、始終ごろごろしているのです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第82回。上中下の「下 先生と遺書」の章#28(全110回)

(5:41) Soseki Natsume "KOKORO"#82


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2007年2月14日 (水)

夏目漱石「こころ」第081回(下二十七)

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「下 先生と遺書 二十七」
一週間ばかりして私(わたくし)はまたKとお嬢さんがいっしょに話している室(へや)を通り抜けました。その時お嬢さんは私の顔を見るや否(いな)や笑い出しました。私はすぐ何がおかしいのかと聞けばよかったのでしょう。それをつい黙って自分の居間まで来てしまったのです。だからKもいつものように、今帰ったかと声を掛ける事ができなくなりました。お嬢さんはすぐ障子(しょうじ)を開けて茶の間へ入ったようでした…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第81回。上中下の「下 先生と遺書」の章#27(全110回)

(5:37) Soseki Natsume "KOKORO"#81


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2007年2月13日 (火)

夏目漱石「こころ」第080回(下二十六)

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「下 先生と遺書 二十六」
Kと私(わたくし)は同じ科におりながら、専攻の学問が違っていましたから、自然出る時や帰る時に遅速がありました。私の方が早ければ、ただ彼の空室(くうしつ)を通り抜けるだけですが、遅いと簡単な挨拶(あいさつ)をして自分の部屋へはいるのを例にしていました。Kはいつもの眼を書物からはなして、襖(ふすま)を開ける私をちょっと見ます。そうしてきっと今帰ったのかといいます。私は何も答えないで点頭(うなず)く事もありますし、あるいはただ「うん」と答えて行き過ぎる場合もあります…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第79回。上中下の「下 先生と遺書」の章#26(全110回)

(5:50) Soseki Natsume "KOKORO"#80


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2007年2月 5日 (月)

夏目漱石「こころ」第079回(下二十五)

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「下 先生と遺書 二十五」
私は蔭(かげ)へ廻(まわ)って、奥さんとお嬢さんに、なるべくKと話をするように頼みました。私は彼のこれまで通って来た無言生活が彼に祟(たた)っているのだろうと信じたからです。使わない鉄が腐るように、彼の心には錆(さび)が出ていたとしか、私には思われなかったのです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第79回。上中下の「下 先生と遺書」の章#25(全110回)

(5:30) Soseki Natsume "KOKORO"#78


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2007年1月29日 (月)

夏目漱石「こころ」第078回(下二十四)

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「下 先生と遺書 二十四」
私は奥さんからそういう風(ふう)に取り扱われた結果、段々快活になって来たのです。それを自覚していたから、同じものを今度はKの上に応用しようと試みたのです。Kと私とが性格の上において、大分(だいぶ)相違のある事は、長く交際(つきあ)って来た私によく解(わか)っていましたけれども、私の神経がこの家庭に入ってから多少角(かど)が取れたごとく、Kの心もここに置けばいつか沈まる事があるだろうと考えたので…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第78回。上中下の「下 先生と遺書」の章#24(全110回)

(5:39) Soseki Natsume "KOKORO"#78


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2007年1月22日 (月)

夏目漱石「こころ」第077回(下二十三)

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「下 先生と遺書 二十三」
私の座敷には控えの間(ま)というような四畳が付属していました。玄関を上がって私のいる所へ通ろうとするには、ぜひこの四畳を横切らなければならないのだから、実用の点から見ると、至極(しごく)不便な室(へや)でした。私はここへKを入れたのです。もっとも最初は同じ八畳に二つ机を並べて、次の間を共有にして置く考えだったのですが、Kは狭苦しくっても一人でいる方が好(い)いといって、自分でそっちのほうを択(えら)んだのです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第77回。上中下の「下 先生と遺書」の章#23(全110回)

(5:27) Soseki Natsume "KOKORO"#77


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2007年1月19日 (金)

夏目漱石「こころ」第076回(下二十二)

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「下 先生と遺書 二十二」
Kの事件が一段落ついた後(あと)で、私(わたくし)は彼の姉の夫から長い封書を受け取りました。Kの養子に行った先は、この人の親類に当るのですから、彼を周旋した時にも、彼を復籍させた時にも、この人の意見が重きをなしていたのだと、Kは私に話して聞かせました。
 手紙にはその後Kがどうしているか知らせてくれと書いてありました。姉が心配しているから、なるべく早く返事を貰(もら)いたいという依頼も付け加えてありました…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第76回。上中下の「下 先生と遺書」の章#22(全110回)

(5:55) Soseki Natsume "KOKORO"#76


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2007年1月17日 (水)

夏目漱石「こころ」第075回(下二十一)

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「下 先生と遺書 二十一」
Kの手紙を見た養父は大変怒りました。親を騙(だま)すような不埒(ふらち)なものに学資を送る事はできないという厳しい返事をすぐ寄こしたのです。Kはそれを私(わたくし)に見せました。Kはまたそれと前後して実家から受け取った書翰(しょかん)も見せました…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第75回。上中下の「下 先生と遺書」の章#21(全110回)

(5:55) Soseki Natsume "KOKORO"#75


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2007年1月10日 (水)

夏目漱石「こころ」第074回(下二十)

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「下 先生と遺書 二十」
Kと私(わたくし)は同じ科へ入学しました。Kは澄ました顔をして、養家から送ってくれる金で、自分の好きな道を歩き出したのです。知れはしないという安心と、知れたって構うものかという度胸とが、二つながらKの心にあったものと見るよりほか仕方がありません。Kは私よりも平気でした…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第74回。上中下の「下 先生と遺書」の章#20(全110回)

(5:52) Soseki Natsume "KOKORO"#74


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2007年1月 8日 (月)

夏目漱石「こころ」第073回(下十九)

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「下 先生と遺書 十九」
私はその友達の名をここにKと呼んでおきます。私はこのKと小供(こども)の時からの仲好(なかよし)でした。小供の時からといえば断らないでも解っているでしょう、二人には同郷の縁故があったのです。Kは真宗(しんしゅう)の坊さんの子でした。もっとも長男ではありません、次男でした。それである医者の所へ養子にやられたのです。私の生れた地方は大変本願寺派(ほんがんじは)の勢力の強い所でしたから、真宗の坊さんは他(ほか)のものに比べると、物質的に割が好かったようです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第73回。上中下の「下 先生と遺書」の章#19(全110回)

(6:07) Soseki Natsume "KOKORO"#73


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2007年1月 1日 (月)

夏目漱石「こころ」第072回(下十八)

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「下 先生と遺書 十八」
私は宅(うち)へ帰って奥さんとお嬢さんにその話をしました。奥さんは笑いました。しかし定めて迷惑だろうといって私の顔を見ました。私はその時腹のなかで、男はこんな風(ふう)にして、女から気を引いて見られるのかと思いました。奥さんの眼は充分私にそう思わせるだけの意味をもっていたのです。私はその時自分の考えている通りを直截(ちょくせつ)に打ち明けてしまえば好かったかも知れません…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第72回。上中下の「下 先生と遺書」の章#18(全110回)

(5:46) Soseki Natsume "KOKORO"#72


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2006年12月13日 (水)

夏目漱石「こころ」第071回(下十七)

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「下 先生と遺書 十七」
私が書物ばかり買うのを見て、奥さんは少し着物を拵(こしら)えろといいました。私は実際田舎(いなか)で織った木綿(もめん)ものしかもっていなかったのです。その頃(ころ)の学生は絹(いと)の入(はい)った着物を肌に着けませんでした。私の友達に横浜(よこはま)の商人(あきんど)か何(なに)かで、宅(うち)はなかなか派出(はで)に暮しているものがありましたが、そこへある時羽二重(はぶたえ)の胴着(どうぎ)が配達で届いた事があります…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第71回。上中下の「下 先生と遺書」の章#17(全110回)

(5:49) Soseki Natsume "KOKORO"#71


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2006年12月 1日 (金)

夏目漱石「こころ」第070回(下十六)

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「下 先生と遺書 十六」
私は相変らず学校へ出席していました。しかし教壇に立つ人の講義が、遠くの方で聞こえるような心持がしました。勉強もその通りでした。眼の中へはいる活字は心の底まで浸(し)み渡らないうちに烟(けむ)のごとく消えて行くのです。私はその上無口になりました。それを二、三の友達が誤解して、冥想(めいそう)に耽(ふけ)ってでもいるかのように、他(た)の友達に伝えました。私はこの誤解を解こうとはしませんでした。都合の好(い)い仮面を人が貸してくれたのを、かえって仕合(しあわ)せとして喜びました。それでも時々は気が済まなかったのでしょう、発作的に焦燥(はしゃ)ぎ廻(まわ)って彼らを驚かした事もあります…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第70回。上中下の「下 先生と遺書」の章#16(全110回)

(5:59) Soseki Natsume "KOKORO"#70


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2006年11月22日 (水)

夏目漱石「こころ」第069回(下十五)

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「下 先生と遺書 十五」
私は奥さんの態度を色々綜合(そうごう)して見て、私がここの家(うち)で充分信用されている事を確かめました。しかもその信用は初対面の時からあったのだという証拠さえ発見しました。他(ひと)を疑(うたぐ)り始めた私の胸には、この発見が少し奇異なくらいに響いたのです。私は男に比べると女の方がそれだけ直覚に富んでいるのだろうと思いました。同時に、女が男のために、欺(だま)されるのもここにあるのではなかろうかと思いました。奥さんをそう観察する私が、お嬢さんに対して同じような直覚を強く働かせていたのだから、今考えるとおかしいのです。私は他(ひと)を信じないと心に誓いながら、絶対にお嬢さんを信じていたのですから。それでいて、私を信じている奥さんを奇異に思ったのですから…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第69回。上中下の「下 先生と遺書」の章#15(全110回)

(6:07) Soseki Natsume "KOKORO"#69


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2006年11月15日 (水)

夏目漱石「こころ」第068回(下十四)

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「下 先生と遺書 十四」
私はお嬢さんの立ったあとで、ほっと一息(ひといき)するのです。それと同時に、物足りないようなまた済まないような気持になるのです。私は女らしかったのかも知れません。今の青年のあなたがたから見たらなおそう見えるでしょう。しかしその頃(ころ)の私たちは大抵そんなものだったのです。
 奥さんは滅多(めった)に外出した事がありませんでした。たまに宅(うち)を留守にする時でも、お嬢さんと私を二人ぎり残して行くような事はなかったのです。それがまた偶然なのか、故意なのか、私には解らないのです。私の口からいうのは変ですが、奥さんの様子を能(よ)く観察していると、何だか自分の娘と私とを接近させたがっているらしくも見えるのです。それでいて、或(あ)る場合には、私に対して暗(あん)に警戒するところもあるようなのですから、始めてこんな場合に出会った私は、時々心持をわるくしました…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第68回。上中下の「下 先生と遺書」の章#14(全110回)

(6:09) Soseki Natsume "KOKORO"#68


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2006年11月 6日 (月)

夏目漱石「こころ」第067回(下十三)

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「下 先生と遺書 十三」
奥さんのこの態度が自然私の気分に影響して来ました。しばらくするうちに、私の眼はもとほどきょろ付かなくなりました。自分の心が自分の坐(すわ)っている所に、ちゃんと落ち付いているような気にもなれました。要するに奥さん始め家(うち)のものが、僻(ひが)んだ私の眼や疑い深い私の様子に、てんから取り合わなかったのが、私に大きな幸福を与えたのでしょう。私の神経は相手から照り返して来る反射のないために段々静まりました…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第67回。上中下の「下 先生と遺書」の章#13(全110回)

(5:50) Soseki Natsume "KOKORO"#67


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2006年10月30日 (月)

夏目漱石「こころ」第066回(下十二)

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「下 先生と遺書 十二」
私の気分は国を立つ時すでに厭世的(えんせいてき)になっていました。他(ひと)は頼りにならないものだという観念が、その時骨の中まで染(し)み込んでしまったように思われたのです。私は私の敵視する叔父(おじ)だの叔母(おば)だの、その他(た)の親戚(しんせき)だのを、あたかも人類の代表者のごとく考え出しました。汽車へ乗ってさえ隣のものの様子を、それとなく注意し始めました。たまに向うから話し掛けられでもすると、なおの事警戒を加えたくなりました。私の心は沈鬱(ちんうつ)でした。鉛を呑(の)んだように重苦しくなる事が時々ありました。それでいて私の神経は、今いったごとくに鋭く尖(とが)ってしまったのです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第66回。上中下の「下 先生と遺書」の章#12(全110回)

(6:06) Soseki Natsume "KOKORO"#66


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2006年10月25日 (水)

夏目漱石「こころ」第065回(下十一)

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「下 先生と遺書 十一」
私は早速(さっそく)その家へ引き移りました。私は最初来た時に未亡人と話をした座敷を借りたのです。そこは宅中(うちじゅう)で一番好(い)い室(へや)でした。本郷辺(ほんごうへん)に高等下宿といった風(ふう)の家がぽつぽつ建てられた時分の事ですから、私は書生として占領し得る最も好い間(ま)の様子を心得ていました。私の新しく主人となった室は、それらよりもずっと立派でした。移った当座は、学生としての私には過ぎるくらいに思われたのです…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第65回。上中下の「下 先生と遺書」の章#11(全110回)

(6:07) Soseki Natsume "KOKORO"#65


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2006年10月16日 (月)

夏目漱石「こころ」第064回(下十)

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「下 先生と遺書 十」
金に不自由のない私(わたくし)は、騒々(そうぞう)しい下宿を出て、新しく一戸を構えてみようかという気になったのです。しかしそれには世帯道具を買う面倒もありますし、世話をしてくれる婆(ばあ)さんの必要も起りますし、その婆さんがまた正直でなければ困るし、宅(うち)を留守にしても大丈夫なものでなければ心配だし、といった訳で、ちょくらちょいと実行する事は覚束(おぼつか)なく見えたのです。ある日私はまあ宅(うち)だけでも探してみようかというそぞろ心(ごころ)から、散歩がてらに本郷台(ほんごうだい)を西へ下りて小石川(こいしかわ)の坂を真直(まっすぐ)に伝通院(でんずういん)の方へ上がりました…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第64回。上中下の「下 先生と遺書」の章#10(全110回)

(5:32) Soseki Natsume "KOKORO"#64


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2006年10月13日 (金)

夏目漱石「こころ」第063回(下九)

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「下 先生と遺書 九」
一口(ひとくち)でいうと、叔父は私(わたくし)の財産を胡魔化(ごまか)したのです。事は私が東京へ出ている三年の間に容易(たやす)く行われたのです。すべてを叔父任(まか)せにして平気でいた私は、世間的にいえば本当の馬鹿でした。世間的以上の見地から評すれば、あるいは純なる尊(たっと)い男とでもいえましょうか。私はその時の己(おの)れを顧みて、なぜもっと人が悪く生れて来なかったかと思うと、正直過ぎた自分が口惜(くや)しくって堪(たま)りません…。


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夏目漱石の「こころ」連続読み第63回。上中下の「下 先生と遺書」の章#9(全110回)

(5:50) Soseki Natsume "KOKORO"#63


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2006年10月 6日 (金)

夏目漱石「こころ」第062回(下八)

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「下 先生と遺書 八」
私は今まで叔父任(まか)せにしておいた家の財産について、詳しい知識を得なければ、死んだ父母(ちちはは)に対して済まないという気を起したのです。叔父は忙しい身体(からだ)だと自称するごとく、毎晩同じ所に寝泊(ねとま)りはしていませんでした。二日家(うち)へ帰ると三日は市(し)の方で暮らすといった風(ふう)に、両方の間を往来(ゆきき)して、その日その日を落ち付きのない顔で過ごしていました。そうして忙しいという言葉を口癖(くちくせ)のように使いました。何の疑いも起らない時は、私も実際に忙しいのだろうと思っていたのです。それから、忙しがらなくては当世流でないのだろうと、皮肉にも解釈していたのです。けれども財産の事について、時間の掛(か)かる話をしようという目的ができた眼で、この忙しがる様子を見ると、それが単に私を避ける口実としか受け取れなくなって来たのです…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第62回。上中下の「下 先生と遺書」の章#8(全110回)

(5:25) Soseki Natsume "KOKORO"#62


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2006年10月 2日 (月)

夏目漱石「こころ」第061回(下七)

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「下 先生と遺書 七」
私が三度目に帰国したのは、それからまた一年経(た)った夏の取付(とっつき)でした。私はいつでも学年試験の済むのを待ちかねて東京を逃げました。私には故郷(ふるさと)がそれほど懐かしかったからです。あなたにも覚えがあるでしょう、生れた所は空気の色が違います、土地の匂(にお)いも格別です、父や母の記憶も濃(こまや)かに漂(ただよ)っています。一年のうちで、七、八の二月(ふたつき)をその中に包(くる)まれて、穴に入った蛇(へび)のように凝(じっ)としているのは、私に取って何よりも温かい好(い)い心持だったのです。
 単純な私は従妹との結婚問題について、さほど頭を痛める必要がないと思っていました…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第61回。上中下の「下 先生と遺書」の章#7(全110回)

(5:27) Soseki Natsume "KOKORO"#61


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2006年9月22日 (金)

夏目漱石「こころ」第060回(下六)

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「下 先生と遺書 六」
私は縁談の事をそれなり忘れてしまいました。私の周囲(ぐるり)を取り捲(ま)いている青年の顔を見ると、世帯染(しょたいじ)みたものは一人もいません。みんな自由です、そうして悉(ことごと)く単独らしく思われたのです。こういう気楽な人の中(うち)にも、裏面にはいり込んだら、あるいは家庭の事情に余儀なくされて、すでに妻を迎えていたものがあったかも知れませんが、子供らしい私はそこに気が付きませんでした…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第60回。上中下の「下 先生と遺書」の章#6(全110回)

(5:55) Soseki Natsume "KOKORO"#60


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2006年9月15日 (金)

夏目漱石「こころ」第059回(下五)

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「下 先生と遺書 五」
私が夏休みを利用して始めて国へ帰った時、両親の死に断えた私の住居(すまい)には、新しい主人として、叔父夫婦が入れ代って住んでいました。これは私が東京へ出る前からの約束でした。たった一人取り残された私が家にいない以上、そうでもするより外(ほか)に仕方がなかったのです。
 叔父はその頃(ころ)市にある色々な会社に関係していたようです。業務の都合からいえば、今までの居宅(きょたく)に寝起(ねお)きする方が、二里(り)も隔(へだた)った私の家に移るより遥かに便利だといって笑いました…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第59回。上中下の「下 先生と遺書」の章#5(全110回)

(5:41) Soseki Natsume "KOKORO"#59


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2006年9月 8日 (金)

夏目漱石「こころ」第058回(下四)

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「下 先生と遺書 四」
とにかくたった一人取り残された私(わたくし)は、母のいい付け通り、この叔父(おじ)を頼るより外(ほか)に途(みち)はなかったのです。叔父はまた一切(いっさい)を引き受けて凡(すべ)ての世話をしてくれました。そうして私を私の希望する東京へ出られるように取り計らってくれました。
 私は東京へ来て高等学校へはいりました。その時の高等学校の生徒は今よりもよほど殺伐(さつばつ)で粗野でした…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第58回。上中下の「下 先生と遺書」の章#4(全110回)

(5:57) Soseki Natsume "KOKORO"#58


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2006年9月 1日 (金)

夏目漱石「こころ」第057回(下三)

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「下 先生と遺書 三」
私が両親を亡(な)くしたのは、まだ私の廿歳(はたち)にならない時分でした。いつか妻(さい)があなたに話していたようにも記憶していますが、二人は同じ病気で死んだのです。しかも妻があなたに不審を起させた通り、ほとんど同時といっていいくらいに、前後して死んだのです。実をいうと、父の病気は恐るべき腸(ちょう)窒扶斯(チフス)でした。それが傍(そば)にいて看護をした母に伝染したのです。
 私は二人の間にできたたった一人の男の子でした…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第57回。上中下の「下 先生と遺書」の章#3(全110回)

(6:12) Soseki Natsume "KOKORO"#57


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2006年8月25日 (金)

夏目漱石「こころ」第056回(下二)

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「下 先生と遺書 二」
「私(わたくし)はそれからこの手紙を書き出しました。平生(へいぜい)筆を持ちつけない私には、自分の思うように、事件なり思想なりが運ばないのが重い苦痛でした。私はもう少しで、あなたに対する私のこの義務を放擲(ほうてき)するところでした。しかしいくら止(よ)そうと思って筆を擱(お)いても、何にもなりませんでした。私は一時間経(た)たないうちにまた書きたくなりました…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第56回。上中下の「下 先生と遺書」の章#2。やっと半分を越えました(全110回)

(6:00) Soseki Natsume "KOKORO"#56


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2006年8月21日 (月)

夏目漱石「こころ」第055回(下一)別バージョン

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別バージョン「下 先生と遺書 一」
前回暗すぎたので修正版。どちらが好みでしょうか?……私(わたくし)はこの夏あなたから二、三度手紙を受け取りました。東京で相当の地位を得たいから宜(よろ)しく頼むと書いてあったのは、たしか二度目に手に入(い)ったものと記憶しています。私はそれを読んだ時何(なん)とかしたいと思ったのです。少なくとも返事を上げなければ済まんとは考えたのです。しかし自白すると、私はあなたの依頼に対して、まるで努力をしなかったのです…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第55回。上中下の「下 先生と遺書」の章#1。先生の遺書の章突入です。

(6:05) Soseki Natsume "KOKORO"#55


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2006年8月 4日 (金)

夏目漱石「こころ」第055回(下一)

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「下 先生と遺書 一」
……私(わたくし)はこの夏あなたから二、三度手紙を受け取りました。東京で相当の地位を得たいから宜(よろ)しく頼むと書いてあったのは、たしか二度目に手に入(い)ったものと記憶しています。私はそれを読んだ時何(なん)とかしたいと思ったのです。少なくとも返事を上げなければ済まんとは考えたのです。しかし自白すると、私はあなたの依頼に対して、まるで努力をしなかったのです…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第55回。上中下の「下 先生と遺書」の章#1である。ついに来ました。先生の遺書の章です。

(6:15) Soseki Natsume "KOKORO"#55


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2006年7月31日 (月)

夏目漱石「こころ」第054回(中 十八)

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「中 両親と私 十八」
病室にはいつの間にか医者が来ていた。なるべく病人を楽にするという主意からまた浣腸(かんちょう)を試みるところであった。看護婦は昨夜(ゆうべ)の疲れを休めるために別室で寝ていた。慣れない兄は起(た)ってまごまごしていた。私(わたくし)の顔を見ると、「ちょっと手をお貸(か)し」といったまま、自分は席に着いた。私は兄に代って、油紙(あぶらがみ)を父の尻(しり)の下に宛(あ)てがったりした…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第54回。上中下の「中 両親と私」の章の第18回(最終回)である。
いよいよ、次回より、「下 先生と遺書」へ突入!。
(6:15) Soseki Natsume "KOKORO"#54


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2006年7月21日 (金)

夏目漱石「こころ」第053回(中 十七)

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「中 両親と私 十七」
その日は病人の出来がことに悪いように見えた。私(わたくし)が厠(かわや)へ行こうとして席を立った時、廊下で行き合った兄は「どこへ行く」と番兵のような口調で誰何(すいか)した。
「どうも様子が少し変だからなるべく傍(そば)にいるようにしなくっちゃいけないよ」と注意した…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第53回。上中下の「中 両親と私」の章の第17回である。
いよいよ中も後1回で終わりです。それでやっと半分。下 先生と遺書へ続きます。
(5:38) Soseki Natsume "KOKORO"#53


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2006年7月14日 (金)

夏目漱石「こころ」第052回(中 十六)

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「中 両親と私 十六」
父は時々囈語(うわこと)をいうようになった。 「乃木大将(のぎたいしょう)に済まない。実に面目次第(めんぼくしだい)がない。いえ私もすぐお後(あと)から」  こんな言葉をひょいひょい出した。母は気味を悪がった。なるべくみんなを枕元(まくらもと)へ集めておきたがった。気のたしかな時は頻(しき)りに淋(さび)しがる病人にもそれが希望らしく見えた…。

夏目漱石の「こころ」連続読み第52回。上中下の「中 両親と私」の章の第16回である。
いよいよ中も後2回で終わりです。それでやっと半分。下 先生と遺書へ続きます。
(5:52) Soseki Natsume "KOKORO"#52


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2006年7月12日 (水)

夏目漱石「こころ」第051回(中 十五)

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「中 両親と私 十五」
「先生先生というのは一体誰(だれ)の事だい」と兄が聞いた。 「こないだ話したじゃないか」と私(わたくし)は答えた。私は自分で質問をしておきながら、すぐ他(ひと)の説明を忘れてしまう兄に対して不快の念を起した。「聞いた事は聞いたけれども」 兄は必竟(ひっきょう)聞いても解(わか)らないというのであった。私から見ればなにも無理に先生を兄に理解してもらう必要はなかった。けれども腹は立った。また例の兄らしい所が出て来たと思った…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第51回。上中下の「中 両親と私」の章の第15回である。
(5:26) Soseki Natsume "KOKORO"#51

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2006年7月10日 (月)

夏目漱石「こころ」第050回(中 十四)

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「中 両親と私 十四」
 父の病気は最後の一撃を待つ間際(まぎわ)まで進んで来て、そこでしばらく躊躇(ちゅうちょ)するようにみえた。家のものは運命の宣告が、今日下(くだ)るか、今日下るかと思って、毎夜床(とこ)にはいった。父は傍(はた)のものを辛(つら)くするほどの苦痛をどこにも感じていなかった。その点になると看病はむしろ楽であった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第50回。上中下の「中 両親と私」の章の第14回である。
(5:51) Soseki Natsume "KOKORO"#50

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2006年7月 5日 (水)

夏目漱石「こころ」第049回(中 十三)

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「中 両親と私 十三」
 私(わたくし)の書いた手紙はかなり長いものであった。母も私も今度こそ先生から何とかいって来るだろうと考えていた。すると手紙を出して二日目にまた電報が私宛(あて)で届いた。それには来ないでもよろしいという文句だけしかなかった。私はそれを母に見せた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第49回。上中下の「中 両親と私」の章の第13回である。
(5:35) Soseki Natsume "KOKORO"#49

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2006年6月20日 (火)

夏目漱石「こころ」第048回(中 十二)

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「中 両親と私 十二」
 兄が帰って来た時、父は寝ながら新聞を読んでいた。父は平生(へいぜい)から何を措(お)いても新聞だけには眼を通す習慣であったが、床(とこ)についてからは、退屈のため猶更(なおさら)それを読みたがった。母も私(わたくし)も強(し)いては反対せずに、なるべく病人の思い通りにさせておいた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第48回。上中下の「中 両親と私」の章の第12回である。
(5:43) Soseki Natsume "KOKORO"#48
※2006.6.21一部読みの重複があったので修正しました。

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2006年6月 9日 (金)

夏目漱石「こころ」第047回(中 十一)

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「中 両親と私 十一」
 こうした落ち付きのない間にも、私(わたくし)はまだ静かに坐(すわ)る余裕をもっていた。偶(たま)には書物を開けて十頁(ページ)もつづけざまに読む時間さえ出て来た。一旦(いったん)堅く括(くく)られた私の行李(こうり)は、いつの間にか解かれてしまった。私は要(い)るに任せて、その中から色々なものを取り出した。私は東京を立つ時、心のうちで極(き)めた、この夏中の日課を顧みた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第47回。上中下の「中 両親と私」の章の第11回である。
(6:16) Soseki Natsume "KOKORO"#47

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2006年6月 7日 (水)

夏目漱石「こころ」第046回(中 十)

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「中 両親と私 十」
 父の病気は同じような状態で一週間以上つづいた。私(わたくし)はその間に長い手紙を九州にいる兄宛(あて)で出した。妹(いもと)へは母から出させた。私は腹の中で、おそらくこれが父の健康に関して二人へやる最後の音信(たより)だろうと思った。それで両方へいよいよという場合には電報を打つから出て来いという意味を書き込めた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第46回。上中下の「中 両親と私」の章の第10回である。
(5:53) Soseki Natsume "KOKORO"#46

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2006年6月 6日 (火)

夏目漱石「こころ」第045回(中 九)

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「中 両親と私 九」
 私(わたくし)がいよいよ立とうという間際になって、(たしか二日前の夕方の事であったと思うが、)父はまた突然引(ひ)っ繰(く)り返(かえ)った。私はその時書物や衣類を詰めた行李(こうり)をからげていた。父は風呂(ふろ)へ入ったところであった。父の背中を流しに行った母が大きな声を出して私を呼んだ。私は裸体(はだか)のまま母に後ろから抱かれている父を見た…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第45回。上中下の「中 両親と私」の章の第9回である。
(5:46) Soseki Natsume "KOKORO"#45

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2006年5月18日 (木)

夏目漱石「こころ」第044回(中 八)

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「中 両親と私 八」
 九月始めになって、私(わたくし)はいよいよまた東京へ出ようとした。私は父に向かって当分今まで通り学資を送ってくれるようにと頼んだ。「ここにこうしていたって、あなたのおっしゃる通りの地位が得られるものじゃないですから」 私は父の希望する地位を得(う)るために東京へ行くような事をいった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第44回。上中下の「中 両親と私」の章の第8回である。
(5:35) Soseki Natsume "KOKORO"#44

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2006年5月17日 (水)

夏目漱石「こころ」第043回(中 七)

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「中 両親と私 七」
父は明らかに自分の病気を恐れていた。しかし医者の来るたびに蒼蠅(うるさ)い質問を掛けて相手を困らす質(たち)でもなかった。医者の方でもまた遠慮して何ともいわなかった。父は死後の事を考えているらしかった。少なくとも自分がいなくなった後(あと)のわが家(いえ)を想像して見るらしかった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第43回。上中下の「中 両親と私」の章の第7回である。
(5:28) Soseki Natsume "KOKORO"#43

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2006年5月10日 (水)

夏目漱石「こころ」第042回(中 六)

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「中 両親と私 六」
八月の半(なか)ばごろになって、私(わたくし)はある朋友(ほうゆう)から手紙を受け取った。その中に地方の中学教員の口があるが行かないかと書いてあった。この朋友は経済の必要上、自分でそんな位地を探し廻(まわ)る男であった。この口も始めは自分の所へかかって来たのだが、もっと好(い)い地方へ相談ができたので、余った方を私に譲る気で、わざわざ知らせて来てくれたのであった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第42回。上中下の「中 両親と私」の章の第6回である。
(5:16) Soseki Natsume "KOKORO"#42

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2006年5月 9日 (火)

夏目漱石「こころ」第041回(中 五)

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「中 両親と私 五」
父の元気は次第に衰えて行った。私(わたくし)を驚かせたハンケチ付きの古い麦藁帽子(むぎわらぼうし)が自然と閑却(かんきゃく)されるようになった。私は黒い煤(すす)けた棚の上に載(の)っているその帽子を眺(なが)めるたびに、父に対して気の毒な思いをした。父が以前のように、軽々と動く間は、もう少し慎(つつし)んでくれたらと心配した…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第41回。上中下の「中 両親と私」の章の第5回である。
(6:32) Soseki Natsume "KOKORO"#41

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2006年5月 4日 (木)

夏目漱石「こころ」第040回(中 四)

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「中 両親と私 四」
小勢(こぜい)な人数(にんず)には広過ぎる古い家がひっそりしている中に、私(わたくし)は行李(こうり)を解いて書物を繙(ひもと)き始めた。なぜか私は気が落ち付かなかった。あの目眩(めまぐ)るしい東京の下宿の二階で、遠く走る電車の音を耳にしながら、頁(ページ)を一枚一枚にまくって行く方が、気に張りがあって心持よく勉強ができた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第40回。上中下の「中 両親と私」の章の第4回である。
(5:58) Soseki Natsume "KOKORO"#40

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2006年4月28日 (金)

夏目漱石「こころ」第039回(中 三)

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「中 両親と私 三」
私(わたくし)のために赤い飯(めし)を炊(た)いて客をするという相談が父と母の間に起った。私は帰った当日から、あるいはこんな事になるだろうと思って、心のうちで暗(あん)にそれを恐れていた。私はすぐ断わった。「あんまり仰山(ぎょうさん)な事は止(よ)してください」…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第39回。上中下の「中 両親と私」の章の第3回である。
(5:08) Soseki Natsume "KOKORO"#39

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2006年4月19日 (水)

夏目漱石「こころ」第038回(中 二)

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「中 両親と私 二」
私(わたくし)は母を蔭(かげ)へ呼んで父の病状を尋ねた。
「お父さんはあんなに元気そうに庭へ出たり何かしているが、あれでいいんですか」
「もう何ともないようだよ。大方(おおかた)好くおなりなんだろう」
 母は案外平気であった。都会から懸(か)け隔たった森や田の中に住んでいる女の常として、母はこういう事に掛けてはまるで無知識であった。それにしてもこの前父が卒倒した時には、あれほど驚いて、あんなに心配したものを、と私は心のうちで独り異(い)な感じを抱(いだ)いた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第38回。上中下の「中 両親と私」の章の第2回である。
(5:36) Soseki Natsume "KOKORO"#38

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2006年4月17日 (月)

夏目漱石「こころ」第037回(中 一)

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「中 両親と私一」
宅(うち)へ帰って案外に思ったのは、父の元気がこの前見た時と大して変っていない事であった。
「ああ帰ったかい。そうか、それでも卒業ができてまあ結構だった。ちょっとお待ち、今顔を洗って来るから」
 父は庭へ出て何かしていたところであった。古い麦藁帽(むぎわらぼう)の後ろへ、日除(ひよけ)のために括(くく)り付けた薄汚(うすぎた)ないハンケチをひらひらさせながら、井戸のある裏手の方へ廻(まわ)って行った。
 学校を卒業するのを普通の人間として当然のように考えていた私(わたくし)は、それを予期以上に喜んでくれる父の前に恐縮した。…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第37回。上中下の「中 両親と私」の章の第1回である。
(5:24) Soseki Natsume "KOKORO"#37

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2006年3月31日 (金)

夏目漱石「こころ」第036回

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「三十六」
私はその翌日も暑さを冒して、頼まれものを買い集めて歩いた。手紙で注文を受けた時は何でもないように考えていたのが、いざとなると大変億劫に感ぜられた。私は電車の中で汗を拭きながら、他の時間と手数に気の毒という観念をまるでもっていない田舎者を憎らしく思った…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第36回。上中下の「上 先生と私」の章の最終回である。全体の1/3にあたる。
(5:31) Soseki Natsume "KOKORO"#36

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2006年3月30日 (木)

夏目漱石「こころ」第035回

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「三十五」
私は立て掛けた腰をまたおろして、話の区切りの付くまで二人の相手になっていた。「君はどう思います」と先生が聞いた。先生が先へ死ぬか、奥さんが早く亡くなるか、固より私には判断のつくべき問題ではなかった。私はただ笑っていた…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第35回。
(5:22) Soseki Natsume "KOKORO"#35

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2006年3月29日 (水)

夏目漱石「こころ」第034回

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「三十四」
私はその夜十時過ぎに先生の家を辞した。二、三日うちに帰国するはずになっていたので、座をたつ前に私はちょっと暇乞いの言葉を述べた。「また当分お目にかかれませんから」「九月には出ていらっしゃるんでしょうね」私はもう卒業したのだから、必ず九月に出てくる必要もなかった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第034回。
(4:59) Soseki Natsume "KOKORO"#34

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2006年3月28日 (火)

夏目漱石「こころ」第033回

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「三十三」
飯になった時、奥さんは傍に坐っている下女を次へ立たせて、自分で給仕の役をつとめた。これが表立たない客に対する先生の家の仕来りらしかった。始めの一、二回は私も窮屈を感じたが、度数の重なるにつけ、茶碗を奥さんの前へ出すのが、何でもなくなった…。 夏目漱石の「こころ」連続読み第33回。
(6:18) Soseki Natsume "KOKORO"#33
※ココログメンテナンス(7:00-17:00)の為、午前中にアップできませんでした。

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2006年3月27日 (月)

夏目漱石「こころ」第032回

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「三十二」
私の論文は自分が評価していたほどに、教授の眼にはよく見えなかったらしい。それでも私は予定通り及第した。卒業式の日、私は黴び臭くなった古い冬服を行李の中から出して着た…。文字解説:糊のコワイ=糊の硬い。カンショウ=癇症。(原文通り)
夏目漱石の「こころ」連続読み第32回。
(6:18) Soseki Natsume "KOKORO"#32

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2006年3月26日 (日)

夏目漱石「こころ」第031回

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「三十一」
その日の談話もついにこれぎりで発展せずにしまった。私はむしろ先生の態度に畏縮して、先へ進む気が起こらなかったのである。二人は市の外れから電車に乗ったが、車内ではほとんど口を聞かなかった。電車を降りると間もなく別れなければならなかった…
夏目漱石の「こころ」連続読み第31回。
(5:41) Soseki Natsume "KOKORO"#31

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2006年3月25日 (土)

夏目漱石「こころ」第030回

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「三十」
その時の私は腹の中で先生を憎らしく思った。肩を並べて歩き出してからも、自分の聞きたい事をわざと聞かずにいた。しかし先生の方では、それに気が付いていたのか、いないのか、まるで私の態度に拘泥る様子を見せなかった…私は少し業腹になった…
夏目漱石の「こころ」連続読み第30回。
(5:41) Soseki Natsume "KOKORO"#30

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2006年3月24日 (金)

夏目漱石「こころ」第029回

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「二十九」
先生の談話は、この犬と子供のために、結末まで進行する事ができなくなったので、私はついにその要領を得ないでしまった。先生の気にする財産云々の卦念はその時の私には全くなかった。…とにかく若い私にはなぜか金の問題が遠くの方に見えた。
夏目漱石の「こころ」連続読み第29回。
(5:28) Soseki Natsume "KOKORO"#29

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2006年3月20日 (月)

夏目漱石「こころ」第028回

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「二十八」
君のうちに財産があるなら、今のうちによく始末をつけてもらっておかないといけんないと思うがね、余計なお世話だけれども。君のお父さんが達者なうちに、貰うものはちゃんと貰っておくようにしたらどうですか。万一の事があった後で、一番面倒の起るのは財産の問題だから…私は先生の言葉に大した注意を払わなかった。
夏目漱石の「こころ」連続読み第28回。
(5:21) Soseki Natsume "KOKORO"#28

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2006年3月15日 (水)

夏目漱石「こころ」第027回

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「二十七」
私はすぐその帽子を取り上げた。所々に着いている赤土を爪で弾きながら先生を読んだ。「先生、帽子が落ちました」「ありがとう」身体を半分起してそれを受け取った先生は、起きるとも寝るとも片付かないその姿勢のままで、変な事を私に聞いた。「突然だが、君の家には財産がよっぽどあるんですか」・・・先生の言葉の底には…大きな意味があった。
夏目漱石の「こころ」連続読み第27回。
(5:35) Soseki Natsume "KOKORO"#27

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2006年3月14日 (火)

夏目漱石「こころ」第026回

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「二十六」
私の自由になったのは、八重桜の散った枝にいつしか青い葉が霞むように伸び始める初夏の季節であった。私は籠を抜け出した小鳥の心をもって、広い天地を一目に見渡しながら、自由に羽搏きをした。私はすぐ先生の家へ行った・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第26回。
(5:35) Soseki Natsume "KOKORO"#26

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2006年3月10日 (金)

夏目漱石「こころ」第025回

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「二十五」
その年の六月に卒業するはずの私は、ぜひともこの論文を成規通り四月いっぱいに書き上げてしまわなければならなかった。二、三、四と指を折って余る時日を勘定して見た時、私は少し自分の度胸を疑った…卒業を前に論文に追われる私の話である。
夏目漱石の「こころ」連続読み第25回。
(6:02) Soseki Natsume "KOKORO"#25

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2006年3月 5日 (日)

夏目漱石「こころ」第024回

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「二十四」
東京へ帰ってみると、松飾はいつか取り払われていた。町は寒い風の吹くに任せて、どこを見てもこれというほどの正月めいた景気はなかった。私は早速先生のうちへ金を返しに行った…。先生との久々の会話である。
夏目漱石の「こころ」連続読み第24回。
(4:56) Soseki Natsume "KOKORO"#24

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2006年3月 2日 (木)

夏目漱石「こころ」第023回

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「二十三」
私は退屈な父の相手としてよく将棋盤に向かった。二人とも無精な性質なので、炬燵にあたったまま、盤を櫓の上へ載せて、駒を動かすたびに、わざわざ手を掛布団の下から出すような事をした…実家での私と両親の話…私は東京へ帰りたくなった・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第23回。
(5:46) Soseki Natsume "KOKORO"#23

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2006年3月 1日 (水)

夏目漱石「こころ」第022回

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「二十ニ」
父の病気は思ったほど悪くはなかった。それでも着いた時は、床の上に胡座をかいて、「みんなが心配するから、まあ我慢してこう凝っとしている。なにもう起きても好いのさ」といった。…実家に帰った私と両親の話の回である。何やら新たな展開の予感・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第22回。
(5:33) Soseki Natsume "KOKORO"#22

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2006年2月24日 (金)

夏目漱石「こころ」第021回

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「二十一」
冬が来た時、私は偶然国へ帰らなければならない事になった。私の母から受け取った手紙に、父の病気の経過が面白くない様子が書いてあって、できるなら帰って来てくれと書いてあった。私は暇乞いかたがた先生のところへ言った・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第20回。
(5:06) Soseki Natsume "KOKORO"#21  祝!トリノオリンピック フィギアスケート 荒川静香さん 金メダル!

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2006年2月21日 (火)

夏目漱石「こころ」第020回

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「二十」
私は私のつらまえた事実の許す限り、奥さんを慰めようとした。奥さんもまたできるだけ私によって慰められたそうに見えた。それで二人は同じ問題をいつまでも話し合った・・・十時頃になって先生の靴の音が聞こえた時・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第20回。
(5:30) Soseki Natsume "KOKORO"#20

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2006年2月19日 (日)

夏目漱石「こころ」第019回

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「十九」
私がその気で話しているうちに、奥さんの様子が次第に変わって来た。奥さんは、私のハートを動かし始めた・・・実は、すこし思い当たる事があるんです・・・大学時代に先生に訪れた、事件とは・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第19回。
(6:03) Soseki Natsume "KOKORO"#19

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2006年2月18日 (土)

夏目漱石「こころ」第018回

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「十八」
私は奥さんの理解力に感心した。奥さんの態度が旧式の日本の女らしくないところも私の注意に一種の刺激を与えた・・・私と奥さんの会話であるが、最後に奥さんは…奥さんの心に迫る。
夏目漱石の「こころ」連続読み第18回。
(4:59) Soseki Natsume "KOKORO"#18

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2006年2月 7日 (火)

夏目漱石「こころ」第017回

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「十七」
妙なもので角砂糖をつまみあげた奥さんは、私の顔を見て、茶碗の中へ入れる砂糖の数を聞いた・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第17回。
(4:57) Soseki Natsume "KOKORO"#17

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2006年2月 4日 (土)

夏目漱石「こころ」第016回

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「十六」
 私は先生が留守の間、留守番を引き受けた。近頃、先生の近くでは、泥棒がでているからだ。自然、奥さんと話す事になった・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第16回。
(5:06) Soseki Natsume "KOKORO"#16 2006.2.7 mp2形式へ変換

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2006年2月 1日 (水)

夏目漱石「こころ」第015回

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「十五」
 私は先生のこの人生観の基点に、或る強烈な恋愛事件を仮定してみた…雑司ヶ谷にある誰だか分からない人の墓…そうこうしているうちに、私はまた奥さんと差し向かいで話をしなければならない時機が来た…
夏目漱石の「こころ」連続読み第15回。
(5:51) Soseki Natsume "KOKORO"#15

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2006年1月28日 (土)

夏目漱石「こころ」第014回

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「十四」 Soseki Natsume "KOKORO"#14
 私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分が信用できないから、人も信用できないようになっているのです。…
夏目漱石の「こころ」連続読み第14回。
(5:43)

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2006年1月25日 (水)

夏目漱石「こころ」第013回

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「十三」
あなたの心は恋で動いているじゃありませんか。それは恋に上る階段なんです…また悪い事をいった…とにかく恋は罪悪ですよ。
夏目漱石の「こころ」連続読み第13回。
(5:49)

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2006年1月21日 (土)

夏目漱石「こころ」第012回

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「十二」
…しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていいますか?…私は、何とも返事をしなかった…
夏目漱石の「こころ」連続読み第12回。
(5:35)

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2006年1月19日 (木)

夏目漱石「こころ」第011回

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「十一」
先生はまるで世間に名前を知られていない人であった。「先生はなぜああやって、宅で考えたり勉強したりなさるだけで、世の中へ出て仕事をなさらないんでしょう」…
夏目漱石の「こころ」連続読み第11回。
(5:11)

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2006年1月16日 (月)

夏目漱石「こころ」第010回

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「十」
そういう意味からいって、私たちは最も幸福に生れた人間の一対であるべきはずです…先生はなぜ、あるべきはず…と断ったのか、私にはそれだけが不審であった。
夏目漱石の「こころ」連続読み第10回。
(5:33)

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2006年1月12日 (木)

夏目漱石「こころ」第009回

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「九」
先生と奥さんは、仲の良い夫婦の一対であった…しかし、ある日、先生と奥さんは喧嘩をしたらしかった…。
夏目漱石の「こころ」連続読み第9回。
(5:44)

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2006年1月 8日 (日)

夏目漱石「こころ」第008回

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「八」
ある時私は先生の宅で酒を飲まされた。その時奥さんが出て来てそばで酌をしてくれた…先生と奥さんの会話…
夏目漱石の「こころ」連続読み第8回。
(4:44)

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2006年1月 6日 (金)

夏目漱石「こころ」第007回

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「七」
先生は突然私に向って聞いた。あなたは何でそうたびたび私のようなものの宅へやってくるのですか…
夏目漱石の「こころ」連続読み第7回。
(5:03)

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2006年1月 5日 (木)

夏目漱石「こころ」第006回

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「六」
私は最初から先生には近づきがたい不思議があるように思っていた。それを見越した自分の直覚を頼もしくまた嬉しく思っている…。
夏目漱石の「こころ」連続読み第6回。
(5:24)

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2005年12月28日 (水)

夏目漱石「こころ」第005回

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「五」
雑司ヶ谷のお墓へ、先生はいると言う、言ってみる事にした・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第5回。
(5:22)

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2005年12月25日 (日)

夏目漱石「こころ」第004回

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「四」
初めて、先生の宅を訪ねた時、先生は留守であった…
夏目漱石の「こころ」連続読み第4回。
(5:19) 2006/1/31修正

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2005年12月22日 (木)

夏目漱石「こころ」第003回

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「三」
私はこれから先生と懇意になった・・・。海岸での先生との出会いのエピソード。
夏目漱石の「こころ」連続読み第3回。
(5:30)

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2005年12月19日 (月)

夏目漱石「こころ」第002回

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「二」
海岸での先生との出会いのエピソード。先生は、白人と一緒だった・・・
夏目漱石の「こころ」連続読み第2回。
(5:04)

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2005年12月17日 (土)

夏目漱石「こころ」第001回

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上 先生と私 一。鎌倉の海にて先生との出会い。
(4:42)

夏目漱石の「こころ」連続読みに挑戦。
まずは、第一回。全110回になる予定・・・全部読破してやる!と志高くはない・・・笑。
一回一回をきちんとクリアして行けば、110回も夢ではないように思う。
まずは、お聞き下さい。
そして、Podcastに登録して、iPodでお聞きくださいませ!
自分でも毎日聞いてみようと思う。気長におつきあいください。

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